「鍼灸治療 医療制度化は患者にも利益」2009年11月28日(土)朝日新聞掲載

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鍼灸師であり、筑波技術大客員研究員の箕輪政博氏の投稿が、2009年11月28日土曜日朝日新聞の朝刊に掲載されましたので紹介します。(改行、段落設定などはブログで読みやすいように変更しています。)

医療を「疾病を治療する行為」とするならば、手段や手法が異なるとはいえ、西洋医学と東洋医学に違いはない。江戸時代には幕府の認める正当な医学だった日本における漢方や鍼灸(しんきゅう)・按摩(あんま)は、当時のドイツ医学を最新と考えた明治政府の方針によって壊滅状態にされてしまったのだ。
確かに、この百年余に西洋医学が日本国民の健康・衛生面に寄与した功績は多大だ。

しかし、ホメオパシーや自然療法など、日本では医療と認知されていない代替医療が明治期のドイツですでに広く認知され、現代まで浸透してきたことが見過ごされている。

それ以来、西洋化一辺倒できた歪(ゆが)みは、近年の日本でも徐々に現れている。また、疾病構造が変化して生活習慣病が主体になり、これまでの治療医学だけでは十分ではないと多くの国民が考え始めた。

昨年、診療科名に「漢方内科」が標榜(ひょうぼう)できるようになり、医学部教育に「和漢薬の概要説明」1単位が盛り込まれているとはいえ、東洋医学が現代日本の法的・制度的な医学医療に正式に位置づけられている印象はまだ薄い。

とりわけ、鍼灸治療は微妙な位置にある。社会医学研究者から時に「半制度的医療」と表現されるこの現状が「鍼灸」というものを、国民にも当の鍼灸師にも分かりにくくしてしまっている。

きょうも鍼灸外来には、しびれや不定愁訴といった生活習慣病から生じる様々な症状、整形外科で緩和・対処できない症状、命に別条はないが生活上不快といった、現代医学の「数値上の健康」では推し量れない症状に悩む患者が助けを求めにくる。

1回4千~5千円の治療費の経済的負担は小さくないだろう。療養費という医療保険の方法があるのだが、これには「医師の同意書」というやっかいな手続きがつきまとう。鍼灸の置かれた「半制度的」な位置が患者と鍼灸師、双方にとって不利益になっているのが実情である。

治療が終わる。患者の表情は明るくなり、体が軽くなりましたと告げる。鍼灸師は患者のその一言のために「一本の鍼(はり)と一握りの艾(もぐさ)」で癒やすことに人生を賭けている。

そして、患者のほとんどが現代西洋医学と併用していることも事実である。先進諸国を中心に統合医療や補完医療として鍼灸が注目され、英国や米国では鍼灸を医療の一部に位置づける動きも始まっている。伝統的に東洋医学に親しんできた我が国のほうがむしろ導入に消極的なのはどういうことか。早急に、鍼灸を医学・医療の制度上に位置づける必要がある。

西洋・東洋の医学の長短を見極め、現代医学を補完するものとして、鍼灸を健康施策に導入することは、広範な国民の利益につながると考える。

2009年11月28日土曜日朝日新聞朝刊 私の視点より

さあ、みなさんはどのようにお考えでしょうか?

現在の鍼灸を取り巻く問題など、みなさんのご意見をお待ちしています。

ちなみに私はこの記事を読んで「治療が終わる。患者の表情は明るくなり、体が軽くなりましたと告げる。鍼灸師は患者のその一言のために「一本の鍼(はり)と一握りの艾(もぐさ)」で癒やすことに人生を賭けている。」の一文が、本校の目指すべきものと一致しているように思えました。

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