日本小児はり学会講演会長要旨

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第17回大阪漢方鍼灸医学セミナーにてご講演いただきました日本小児はり学会会長の井上悦子先生が講演要旨を執筆してくださいました。 セミナーに参加できなかった方にも是非小児はりを知って頂きたいとのことで分かりやすくまとまっていますので是非ご一読ください。

2019年7月28日 大阪漢方鍼灸医学セミナー     

 「こどもの症状には小児はりを-小児はりの基礎と実際-」 

日本小児はり学会 会長 井上悦子(森ノ宮医療大学客員教授)

要旨  

小児はりは日本で開発され、歴史とともに発展してきた日本オリジナルの刺さない鍼の技法である。

これは小児鍼とも言われ、主に0歳~12歳までの子どもを対象に、種々の専用の針具で皮膚を刺激して症状を改善する技法である。

軽く皮膚を刺激するだけの小児はりであるが、便通がよくなったり、よく眠るようになったり、食欲が出たりと、即効性があり、江戸時代後期から昭和にかけて関西で盛んに行われ、特に大阪では多いときには100人も200人もの子どもを親が連れてきたという。

鍼灸院の看板には小児はりや小児鍼、虫はりという文字が必ず書かれていた。

小児はりは子どもの健やかな成長を願う人々の健康文化として社会に根付いていた。しかし核家族化が進んだ現在、小児はりの存在自体を知らない親は多く、小児はりをしたことがない鍼灸師も多いのが現実である。

日本における小児はりの発祥がいつごろであるか定かではないが、長野仁氏によれば、古くは鎌倉時代や戦国時代の文献にそれらしき記載があるという。

江戸時代中期には大阪の平野郷の中野村に小児鍼師が存在していた史料(1763)が残っている。

現在でも近鉄南大阪線に針中野という駅があり、往時の中野家の繁盛ぶりが偲ばれる。

小児はりの技法には大きく分けて接触鍼法と摩擦鍼法の2種がある。

接触鍼法は皮膚に針具をトントンとリズミカルに当てていく技法であり、摩擦鍼法は針具でシュッシュッと皮膚を撫でさする技法である。

これらの刺激の強度や刺激範囲、刺激時間は子どもに応じて加減し、適切な刺激量で子どもが気持ちよいと感じるように施術することがコツである。

小児はりが適応する症状や疾患については、従来の夜泣き、疳の虫、便通異常、風邪症状、夜尿症だけでなく、最近ではアトピー性皮膚炎や発達障害、起立性調節障害にも施術されることが多く、効果が期待されている。

また乳幼児や児童だけでなく、高齢者の認知症にも応用され、小児はりの可能性は広がりつつある。

このような微細刺激の効果の機序については、わずか0.2ミリ以下の表皮(ケラチノサイト)の機能、体性自律神経反射やオキシトシンの分泌からもうかがい知ることができる。

一方、小児はりは海外でも注目され、欧米や南米で実践されている。

日本国内でも一人でも多くの鍼灸師が臨床に取り入れ、小児はりが更に普及していくことを願う。

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